国内eスポーツ市場が抱える3つの課題とは?データから将来性を探る

昨今注目を集めているeスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)。世界中から数多くのプロゲーマーが参加し、大会のトーナメントを勝ち進むことにより賞金を獲得できる、新たなスポーツ分野の一つです。

世界では多数の大会が開催され人気を集めていますが、日本は海外に比べて知名度が高いとはいえません。日本では、eスポーツの普及を阻害する課題が存在するからです。

今回は、国内eスポーツ市場が抱える3つの課題について詳しくお伝えします。


■世界的に急拡大するeスポーツ!2023年の予測市場規模は1,758億円へ成長

eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)という言葉は2000年に生まれ、同年10月にはWCGC(World Cyber Games Challenge)が開催。いまでは世界的に数多くのプロゲーマーを対象にeスポーツ大会が開かれ、徐々に人気が高まっています。

アメリカの市場調査会社newzooの「Global Esports Market Report 2020」によると、2020年のeスポーツの市場規模は約1,165億円(10.593億ドル)に達し、2023年には約1,758億円(15.982億ドル)にまで成長すると予測されています。

一方、日本のeスポーツ市場規模を見てみると、世界に比べてやや見劣りすることが分かりました。KADOKAWA Game Linkageが調査したレポートによれば、日本eスポーツ市場規模は60億円(2019年)で、世界規模のわずか20分の1ほどのシェアしかありません。

では、なぜ日本ではこれほどまでにeスポーツの普及が遅れているのでしょうか。


■国内eスポーツ市場の課題と現状

日本でeスポーツの普及が進まない背景には、法的な問題やオンラインゲームを楽しむ人口が少ない課題が挙げられます。ここでは、国内eスポーツの課題や現状について、詳しくお伝えしていきます。

◎日本は海外に比べてeスポーツの普及が進んでいない

日本では2018年に日本eスポーツ連合(JeSU)が発足され、条件を満たしたゲーマーにプロライセンスを発行する活動などを行っています。しかし、eスポーツが盛り上がる中国やアメリカのように、国内で開催されるeスポーツ大会が大きな話題にのぼることはありません。

日本とは対照的に、eスポーツで最大の市場規模を誇る中国では、早くから国や行政レベルでeスポーツの発展をサポートしてきました。いまではゲームキャスターと呼ばれる独自の職業まで生まれ、人気の高い人は年収数千万元(数億円)を稼ぐといわれています。

◎国内では景品表示法や風営法の壁に阻まれる

日本でeスポーツの普及が進まない理由として、法的な課題が第一点です。

たとえば、日本でeスポーツの大会を開いた場合、高額な賞金を提供すれば「景品表示法」に抵触する恐れが出てきます。過去に国内でも「闘会議」など大規模なeスポーツ大会が開催され、プロゲーマーに仕事の報酬を支払うという形で景品表示法を回避しましたが、現在でもまだ法的にホワイトになったとはいえません。

また、多くの人が集まってゲームを楽しむ際に欠かせない法律が、風営法です。現在の風営法では、お金を払ってゲームを楽しめる場所はゲームセンターに制限されており、さらにアーケードゲームしか設置できないように決まっています。つまり、皆で集まってゲームをプレイするという文化が根付いていないということです。

◎日本は依然コンシューマーゲーム機が広く普及している

日本では昔からコンシューマーゲーム機が多くの国民に愛されており、いまでも家庭に普及するゲームの大半がプレイステーションや任天堂のハードです。一方、国内オンラインPCゲームの市場規模は海外に比べて非常に小さく、日本でeスポーツが普及しづらい要因にもなっています。

以下では、newzooが調べた「Global Games Market Revenues 2018」を基に、日本、アメリカ、中国、韓国のPCゲーム普及率を表にしてみました。

 デバイス別ゲーム市場規模(億円)
日本アメリカ中国韓国
PCゲーム5454,6512,8996,048
モバイル13,12613,12620,6296,012
家庭用ゲーム3,57910,03333348

PCゲームがもっとも普及するのは韓国で、次いでアメリカ、中国と続きます。日本は韓国に比べて10分の1ほどの市場規模しかありません。

賞金額の高いeスポーツの大会はオンラインPCゲームが多く、「Dota2」や「League of Legends」などが人気を集めています。国内でeスポーツが普及するには、オンラインPCゲームの人気タイトルや認知度などがもう少し高まる必要があるといえるでしょう。


■国内eスポーツ市場の課題を解決する今後の施策

確かに日本ではまだeスポーツが普及したとはいえませんが、日本eスポーツ連合を中心に課題を解決しようとする動きが見られます。

eスポーツの普及と法律との兼ね合いをはかるため、「参加料徴収型大会ガイドライン」を公表。eスポーツ大会を開催する際は参加者から参加費を徴収し、それを賞金にあてるということで景品表示法に抵触しないことを明らかにしています。

また、eスポーツ大会で活躍できるアスリートを養成しようと、専用の練習施設を全国各地に増やすことも考えているようです。eスポーツが広く普及している韓国では至るところにPCバン(インターネットカフェとゲーム練習施設が複合したもの)があり、選手たちはそこで腕を磨いています。日本でもこうした練習施設を整え、多くの選手が競い合える環境を作ることが当面の目的です。

上記のようにeスポーツの普及活動は積極的に行われているため、国内市場が必ずしも悲観的とはいえません。今後の日本eスポーツ連合の活動に注目したいところです。


■まとめ

アメリカや中国、韓国に比べ、日本ではeスポーツの普及が遅れています。景品表示法や風営法に抵触する可能性がある点や、もともと日本にはオンラインPCゲームをプレイする文化が広まっていないことなどが原因です。法的整理やオンラインゲームを普及することが課題になってくることでしょう。 現在は日本eスポーツ連合を中心に、さまざまな普及活動が行われています。大会の賞金に対する考え方やゲーム練習施設が増えることにより、日本でもeスポーツが広く認知されていく可能性が高いといえるでしょう。